医療的ケア児支援法

医療的ケア児支援法とは

「医療的ケア児」を法律上できちんと定義し、国や地方自治体が医療的ケア児の支援を行う責務を負うことを日本で初めて明文化した法律です。

立法の目的

医療的ケア児を子育てする家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職を防止する目的で作られました。

障害や医療的ケアの有無にかかわらず、安心して子どもを産み、育てることができる社会を目指します。

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法の基本理念

  • 医療的ケア児及びその家族の生活を社会全体で支援しなければならない。
  • 医療的ケアの有無に関わらず、子どもたちが共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ、個々の状況に応じて、関係機関・民間団体が密に連携し、医療・保健・福祉・教育・労働について切れ目なく支援が行わなければならない。
  • 医療的ケア者(18歳以上)も適切な保健医療・福祉サービスを受けながら日常生活や社会生活を送ることができるように支援を行わなければならない。
  • 住んでいる地域に関係なく、医療的ケア児とその家族が適切な支援を受けられるようにする。

支援法の成立により期待されること

  • 2016年に成立した児童福祉法の改正案で、各省庁および地方自治体が医療的ケア児への支援の「努力義務」を負うことになりました。今回の医療的ケア児支援法の成立により、各省庁および地方自治体は、医療的ケア児への支援に「責務」を負うことになります。責務規定とは、これまでの「努力義務」より強制力が働くものです。
  • 医療的ケア児支援法の施行にともない、各自治体に地方交付税として予算が配分されることになります。各自治体が予算を持ち、強制力のある中で医療的ケア児を支援する事業を進めていくことで、これまで地域によってばらつきのあった支援体制の格差是正が期待されています。
    • 各自治体は、保育所、認定こども園、家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、事業所内保育事業)や放課後児童健全育成事業、学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)での医療的ケア児の受け入れに向けて支援体制を拡充する責務を負います。
    • 具体的には、各自治体は、医療的ケア児が家族の付添いなしで希望する施設に通えるように、保健師、助産師、看護師や准看護師、またはたんの吸引等を行うことができる保育士や保育教諭、介護福祉士等の配置を行います。

自治体が支援を拡充する必要のある施設
(※法律を元にフローレンスが作成)

    • 都道府県ごとに「医療的ケア児支援センター」を設立することが義務付けられており、医療的ケア児とその家族が困りごとがあった際には、ワンストップで対応できるようになることが期待されています。

支援センター
(※法律を元にフローレンスが作成)

今後の課題

  • 地方自治体が主体となって進める事業となるため、最終的な判断は、自治体に委ねられています。きちんと自治体で支援制度を整備していくためには、地方議会で活発に議論を重ねていく必要があります。

「医療的ケア児支援法」成立の経緯

  • 「永田町子ども未来会議」は、超党派の国会議員や厚生労働省や文部科学省などの官僚、医療関係者、福祉事業者、当事者団体が集まり、医療的ケア児の支援に必要な施策や制度を検討する勉強会です。
  • 立憲民主党 衆議院議員 荒井氏をはじめとした医療的ケア児への支援に関心の高い超党派の議員が「障害児保育園ヘレン」を視察したことをきっかけに、永田町子ども未来会議は2015年にスタートしました。

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  • フローレンスが事務局を務める「全国医療的ケア児支援協議会」も、永田町子ども未来会議のメンバーとして参加し、医療的ケア児の支援拡充のために何が必要か、障害児保育園の事業運営をしてきた経験と知見をもとに提言を行ってきました。
  • 永田町子ども未来会議の活動により、2016年に児童福祉法の改正案が成立し、法律の中に医療的ケア児に関する文言が初めて明記されました。しかし、医療的ケア児への支援拡充が努力義務規定の記載にとどまったため、自治体によってサービスに差が出ることが懸念されていました。また、障害児の受け入れ先を拡充していくためには、法律の整備と同時に障害福祉サービス等報酬改定(医療的ケア児をお預かりする施設を適切に評価し、安定して運営できるようにするための制度の整備)も進めていく必要がありました。
  • 2018年の障害福祉サービス等報酬改定に大きな期待が寄せられましたが、医療的ケア児の預け先が拡大するには程遠い改定内容でした。医療的ケア児への支援を拡充するためには、厚生労働省・文部科学省・総務省の力を結集する必要があり、省庁をまとめるための法律の必要性が明らかになりました。
  • その後、永田町子ども未来会議で超党派議員立法として医療的ケア児支援法案を起草し国会に提出され、2021年6月に医療的ケア児支援法が成立しました。なお、同年4月の障害福祉サービス等報酬の改定により、医療的ケア児の受け入れに必要な費用を補うための報酬が事業所へ適切に分配されることになり、動ける医療的ケア児の受け入れ先の拡大に向けて大きな一歩を踏み出しました

 

よくあるQ&A

Q.法律はいつから施行されるのでしょうか?

A.公布から3ヶ月後より施行されます。

 

動画
■6/22(火)20:00より、YouTubeライブ「医療的ケア児支援法オンライン解説会」を開催しました。
出演:
・永田町子ども未来会議事務局長 加藤千穂さん
・認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹
録画URL:https://youtu.be/UD6H4Tbwglo

■2021年6月11日成立!医ケア児支援法成立までの国会中継ダイジェスト
https://youtu.be/hCTwldhksOQ

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参考リンク集

・令和3年度障害福祉サービス等報酬改定のまとめページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00007.html

・医療的ケア児支援法
https://www.mext.go.jp/content/20210621-mxt_tokubetu01-000007449_01.pdf

・文部科学省発行:小学校等における 医療的ケア実施支援資料
https://www.mext.go.jp/content/20210701-mxt_tokubetu01-000016489_01.pdf
掲載元)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1340250_00002.htm

※一部画像に不正確な記述があったので、削除しました。(2021/6/13)
※一部画像を差し替えました。(2021/6/15)