新生児医療の発達によって
近年の新生児医療の発達により、医療的ケアが必要な子どもが急増しています。
文部科学省の全国調査※によると、医療的ケアが必要な児童数が
平成23年5月の段階で19,303名でしたが、
2年後の平成25年5月では、25,175名とおよそ6,000名も増えています。
(※文部科学省「特別支援学校医療的ケア実施体制状況調査結果」)
また、当団体の推計によると
東京都には未就学の重症心身障害児が約1600人存在します。
この数字は、既存の病院システムだけでは障害児を十分に受け止めることは
不可能であることを意味しており、地域全体でこうした子どもを支える仕組みが
求められています。
受け皿が存在しない日本
では、医療的ケアが必要な子どもたちはどのような場所で過ごしているのでしょうか。
例えば未就学児の場合を切り取って見てみます。
保育園による障害児の受入れは、日本においても進みつつあります。
しかし、障害が軽度のものであれば保育園や幼稚園でもお預かりが可能ですが、
医療的ケア児となると、お預かりは難しいのが現状です。
なぜなら医療的ケアに対応できるスタッフ(主に看護師)が充分に配置できず、
安全性を確保できないからです。
それであれば、「障害福祉サービス」はどうでしょう。
未就学児の障害児を対象とした施設として、
療育を目的とした”児童発達支援事業”が挙げられます。
しかし、保育園や幼稚園と同じく、医療的ケア児が通所できる児童発達支援事業所は
限りなく少なく、登録待ちのご家庭は多く存在します。
つまり、医療的ケア児が過ごせる場所は、日本ではほとんどゼロに等しいのです。
通所施設を作ればいいのでは?
医療的ケア児をお預りするには、
看護師などの医療的ケアを施す専門的なスタッフの確保が必要です。
しかし、そのようなスタッフの確保は難しく、さらに確保できたとしても、
既存の障害類型(※重症心身障害児:大島分類)から医療的ケア児は排除されているため、
国からの補助は高くなく、事業の運営は非常に厳しいことが課題となります。
制度と制度の狭間に存在する医療的ケア児を預かることは財政的に厳しく、
結果的に医療的ケア児の受け皿が極端に少ないことにつながっています。
医療的ケア児を持つ家族の現状は…
医療的ケア児を持つ家族への支援が大きな問題となっています。
上述のように、医療的ケア児の預け先がないと、24時間365日、家族が常に一緒に過ごすことになります。
例えば、ある調査※では、主たる介護・看護者の「1日の平均睡眠時間」を調べたところ、
医療依存度が高い子どもを持つ家庭では、およそ9割が6時間未満、
かつ睡眠が断続的であるという結果が出ています。
睡眠時間が短いと、身体的にも精神的にも健康を害することは想像できるかと思います。
またそれが原因で、結果的にネグレクトにつながる‥ということも考えられます。
※世田谷区内における「医療的ケアを要する障害児・者に関する実態調査(2015)」より
サービスの欠如により…
医療的ケア児が増加しているにも関わらず、彼らを受け入れることのできる社会的インフラが整っていません。
また家族とっては、そのことが原因で、QOLの低下や精神的ストレス、
あるいは子どもにとっては発達機会の損失など様々な問題が生じているのです。
これが、今のわたしたちが暮らす日本社会の姿です。
医療的ケア児、そしてその親、双方を支える社会的な仕組みが整っていないのが現状です。
障害があってもなくても、医ケアが必要でも、そうでなくても、
全ての子どもたちが、活き活きと過ごす場所があり、
また、保護者の誰もが、笑顔で子育てができる、
そのような社会を目指してはいけないのでしょうか。
医療的ケア児を取り巻く問題を解決するにはどうすればいいの?
まずは、医療的ケア児(者)を新たな障害類型として位置づけ、
十分な支援・サービスを提供できるようにすることです。
そのためには、声なき声を拾い、一つに集めた大きな声で、
政治や行政に届ける必要があります。
全国医療的ケア児者支援協議会は、
その声を一つにするため発足いたしました。